石井式が小学校へ!2010.8
白川静博士生誕百年を記念して「文字の国 福井」~漢字文化を発信~と題し、7月29・30日 福井県国際交流会館にて「漢字シンポジウム」が開催され、講師に 金田一秀穂先生(杏林大学外国語学部教授、国語学者)をお迎えし、「日本語の中の漢字の役割」について講演がありました。
そのなかで、外国語に比べて日本語は易しい、とのお話があり興味を惹かれました。それによりますと、ヨーロッパの言語に比べて日本語は[音]が少なく、およそ100で済む、と言うことでした。「易しい」とは、話し言葉としての日本語で、読み書きの日本語(漢字・ひらがな・カタカナ)としては外国人にとっては難しいようです。
また、日本の漢字のよさにも触れ、漢字は“読めなくても意味がわかる文字”であることに着目して、「漢字は分析的に表現できる」という観点からも説明があり、正しく読めなくても 例えば、父娘・大人・小人などは意味がわかるというもので感心させられました。
「白川文字学」を活かした福井県独自の副読本による福井市内の小学3年生の公開授業も行われ、漢字の成り立ちを楽しく学ぶことで漢字に対する興味を高め、漢字への苦手意識をなくす効果によって学力向上につなげているようでした。驚くべきことは、県独自のこの漢字指導法を徹底するため、小1~小6までの各指導マニュアルに基づいた講習会を全県で実施し、6年間を通して指導していく体制を整えていることです。
福井県は全国学力テストの結果において4年連続最上位の成績でしたが、その背景には家庭環境にも特色が見られます。共働き世帯率と女性就業率が全国第1位、三世代同居率は全国第2位、一世帯収入は全国第4位。このため、国公立大学進学率は全国第1位、非行で検挙・補導された小中学生の出現率も全国で一番低く、完全失業率も一番低い、という成果が表れています。
ポスターセッションでは、「発信します!私の漢字教育」と称して全国から4人の公立小学校教諭の方と私がそれぞれ独自の指導法を発表されました。
幼稚園では布佐台幼稚園だけでしたが、これは福井県(知事・教育委員会)が石井式教育法を高く評価しており、幼少期の漢字教育こそ学力の基盤を成すものとの認識をされているからだと思われます。福井県は学力日本一を目指し、漢字教育を基盤として動き出しました。成績上位県として、今後も続くものと思われます。
パネルディスカッションでは、「漢字の世界と子どもたち」のテーマで私もパネリストとして参加しました。私の実践発表は、入園して間もない3歳の子供たちが、絵本のなぞり読みや漢字カードゲームで楽しむ映像は衝撃的だったようです。落ち着いたクラスの様子も驚きで、会場の質問も私に集中しました。そのなかで、学年別配当漢字の新出漢字を学習するまで一度も教科書で子供に見せようとしないのは、不自然な教育法である事も指摘させて頂きました。
ポスターセッションで同席した神奈川県から来られた先生は、すでに石井式を小学校で実践された経験があり、国語の教科書を全て漢字仮名交じり文に書き換えることで、素晴らしい学習効果があった、というお話を帰路の新幹線の中で伺い、とても嬉しく思いました。(最近の教科書会社は、教科書の文章をデータCDとして配布しているので、「ワード」が使えさえすれば、教科書の全文章を簡単に漢字変換し、ルビを振ることもできてしまうのです。)こんな熱心な先生に教わっている子供達がうらやましい限りです。
福井県のように全県で学力向上(国語教育)に真剣に取り組む地方公共団体はごく少数です。特区の英語教育などは一部の地域でよくありますが、こちらの成果は聞いたことがありません。
学力向上を目指すのは教師の熱意が欠かせません。福井県では教師のやる気を高めるため、優秀教員を表彰する制度があることも見逃せません。表彰された教師が、学校・保護者に、地域にも認められることで自信とやる気をさらに出し、児童・生徒達からも一目置かれる存在となることで、教育効果も更に高まっていくことが期待できます。
日本漢字教育振興協會でも優秀教員の表彰制度のようなものがあってもよいのではないかなと感じさせられました。
これからの福井においては、幼少期に石井式を導入する学校・幼稚園等が徐々に増えていくものと期待します。教育はそこに生活する住民がしっかりと責任と義務を果たしながら、学校教育を支えていかなくてはなりません。キレる子、引きこもり、ニートにさせない教育を福井にみました。