通信簿に“インフレ現象” 評価「1」つかない!?

公立中学校の通信簿の5段階評価で、学校や地域の差が依然としてある。「相対評価」から「絶対評価」に変わり7年目を迎えるが、成績のインフレ傾向が目立ち、生徒の9割に「5」をつけるケースも。 (産経08.05.06より引用)

首都圏1都3県で教育委員会が公表している最近のデータによると、公立中学3年の9教科平均で「5」の割合は相対評価(上位7%)時代と比べ、千葉が3倍、東京と埼玉が2倍だった。千葉県の場合、相対評価では3だったはずの平均値が、18年度に3.59に上昇。特に保健体育や美術などの技能系4教科で上昇が目立っている。学校間格差も大きく、「最も甘い」学校は平均4.11だが、「最も厳しい」学校は3.11と、1段階の差があるそうだ。(令和2年度千葉県公立高等学校入学者選抜における中学校別学習成績分布表 東葛飾) 
(学習成績分布一覧 東葛飾) (令和2年度千葉県公立高等学校入学者選抜における中学校別学習成績分布表 北総) (学習成績分布一覧 北総)

千葉県浦安市のある市立中では、「5」がついた生徒の割合は保健体育が89%、美術が74%、社会が69%、理科が59%。平均的な生徒でも計9教科のうち4教科で「5」がもらえる計算だ。生徒180人のなかで「1」がついた生徒は1人もおらず、「2」も各教科数人しかいない。

成績の格差に保護者は敏感だ。和歌山県の市立小では昨年、2年生の1学期の通知表を配布後、「別のクラスより評価が厳しい」と保護者からの苦情を受けて、成績を書き換えたことが発覚した。

千葉県は今春の入試から、独自の補正算式を用いて格差を是正し始めた。生徒の通う中学校の評定平均値が、県が設定する評定標準値より高ければ、その分を減じ、逆に低ければ加算する。「各校の絶対評価は尊重しつつ、相対評価には戻さずに公平にした。保護者からは理解されている」(県教委指導課)という。

公立高校入試の内申点は、以前は「10段階の相対評価」で行われていました。現在は通信簿の「絶対評価」が尊重されています。そのため、入試で少しでも有利になるような配慮から平均が「4」以上の学校が登場してくるのかもしれません。

補正算式を用いて格差を是正するとのことですが、通信簿は高校入試のためではなく、それをもらう生徒のためのものであり、努力の成果がきちんと反映されなくてはならないはずです。今の通信簿では相対的に成績上位グループの子は達成感が得られにくく、下位グループの子・親はますます安心して、学力が低下してしまうのではないかと心配になります。

小学校では◎○△の3段階絶対評価が導入されています。小学生を持つ親御さんからは“通信簿を当てにしてはいけないわよ”という話もよく耳にします。

学力向上の対策として、教師の増員や「夜スペ」などに求めるのも手立ての1つではありますが、学力の底上げには、できるだけ公平で正確な評価も大切だと感じています。